クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
ほかのお父さんたちが、彼の肩を叩いて喝采を送る。

照れくさそうに言葉を返すのを横目に見ながら、私は湧いてきたやる気とプレッシャーを、うまく原動力にできますようにと願いながら腕を振って走るシミュレーションをした。




「いたた…」

「大丈夫ですかー、エリカ先生」


原本先生が気の毒そうに、私の足元に目をやる。

私は備品が詰まったかごをひっくり返さないよう注意しつつ、ほとんど片足だけで身体を支えて、裏門横に停めたワンボックスに積んだ。

二周目で体力が尽き、私は見事に転んだのだ。

だけどそれまでにみんなでリードを作っておいてくれたおかげで、優勝した。

子供たちは大喜び。勝敗だけが大事なんじゃないと教えてはいても、私も嬉しい。


「病院が開いてるうちに行ってきたほうがいいですよ、ほら、隣の駅の形成外科、土曜午前はやってますから」

「そうさせてもらおうかなあ」


なかなか味わったことのない痛みなので、来週からの仕事のことも考えると、確かに今日のうちにお医者様に診てほしい。

ここの片付けはもうほぼ終わったし、私が抜けても問題ない。

とはいえ…。


「どうやって病院まで行こう」


切実な悩みに、原本先生も同情の表情をしてくれる。


「交通広場まで行ってタクシー…ですかねえ」

「だよねえ、ここにタクシー呼ぶわけにいかないし…」


無事だったほうの足も、さっそく痛めそうだ、とため息をついたとき、「乗せていきましょうか」と声がした。

びっくりして振り返ると、いつの間にか、律己くんを連れた有馬さんが立っていた。キーを持った手で、裏手を指してみせる。


「俺、車で来てるんで」


原本先生が、小さく「きゃー」と言ったのが聞こえた。

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