クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
震える手から鍵を預かり、律己くんを連れて園を出た。

保育園の入り口とは別に、住居部分のエントランスがある。建物の外をぐるっと回り込み、オートロックの入り口を鍵で開けて入った。

あれ、そういえば何階だったか覚えていない。


「律己くん、お部屋の番号わかる?」


律己くんは自信たっぷりにうなずき、「1414」と番号を教えてくれた。賢い。

エレベーターで14階に上がり、部屋を目指す。一度訪れたことのあるドアの前に辿り着き、インタホンを押した。

反応がない。

寝ているんだろうか。

鍵を持っているので、入れなくはないんだけど、さすがにそれは、と思ってもう一度押した。これでダメなら鍵で開けよう。


「パパー」


律己くんの呼びかけにも反応はない。

律己くんは補食を食べただけなので、これから夕食が必要だ。あの様子じゃ、おばあちゃんを頼ることはできないし、有馬さんが連れて出ることも不可能だろう。

なにか買ってこようか…と考えているうち、ドアの内側から物音がした。

上下ふたつの鍵が開き、「うっせえな!」と悪態をついているのが聞こえる。


「あっ、あの…」

「なにやってんだよ、鍵は!?」

「きゃーっ!!」


荒々しくドアが開けられた瞬間、私は悲鳴をあげた。

現れた有馬さんも、私に驚いたのか、それとも私の声に驚いたのか、わーっと叫んで、羽織っただけのシャツの前をかき合わせる。

その下は裸だ。下も、たぶん…よく見えなかったけど、下着。


「せっ、先生? なんで…あの、母は?」

「あの、園で、腰を痛めてしまって、今、横に…」


私はなるべく彼のほうを見ないようにして、大人たちの醜態をぽかんと見上げる律己くんを差し出した。
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