クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「律己」

「大丈夫です、寝てます」

「なんでこんなところで…」


彼も脱力し、膝からくずおれた。蒼白だったその顔に、生気が戻ってくる。


「珍しいですね、律己くんが寝ている間に動くなんて、園ではないんですけど」

「家でもないです。寝相は悪いですが」


呆れと安堵のまざったため息をついて、有馬さんが律己くんを抱き上げようと脇に手を入れる。するとくりっとした子供らしい瞳が、ぱかっと開いた。


「あ」

「おはよう、律己くん」


律己くんは状況がわからないらしく、「?」という顔で父親を見上げている。


「お前、なんでこんなところで寝てるんだよ」

「ママが来たの」

「ママ? ばあちゃんじゃなくて?」


眉をひそめる有馬さんに、床の上に身を起こした律己くんが「ママ」とうなずく。


「お前、ママなんか覚えてないだろ」

「でもママだった。エリカ先生に、おとうとをよろしくねって言ってねって、言ってた」

「私に?」


弟を?

ちょっとよくわからない。律己くんには、産まれる予定だった弟でもいたんだろうか。


「おとうとってなんだかわかる、律己くん?」

「小さな男の子のこと…」


聡明そうな顔をしかめて、自信なさげに首をかしげる。園のお友達には、もう下が産まれている子も多い。彼としては、その理解で精一杯だろう。


「でも、ママのおとうとっていうのは、パパのことだって」
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