クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
振りほどかれた。

それがあまりに、乱暴というか容赦ないというか、あからさまな拒絶の仕草だったので、私はショックを受けて、ぽかんと立ちすくんだ。

振り返った有馬さんの顔にも、一瞬だけ、自分のしたことに驚いたような表情が浮かんで、でもすぐに消え、不機嫌な顔だけが残った。


「…なんですか」

「あ、あの、その後、律己くん、どうですか」

「どうですかって、なんですか」


えっ、どうしてそんな態度なの。

そういえば電車の中で出会ったときから、いつもの感じじゃなかった。まるで最初の頃みたい。むっつりと気難しげで、不愛想。


「えっと、気になってて。その、有馬さんと…お母様の関係を疑問に思っている様子とか、気にしている様子とか、ないかなって」

「ないですよ、普通です」

「あの後、ふたりの間で、そのお話は」

「してるわけないでしょ」


同じ電車から降りた人たちが、流れになって私たちの横をすり抜けていく。休日の半端な時刻の人波は薄く、すぐに駅前には私と有馬さんだけになった。

私は彼の不機嫌の理由がわからず、弱気な声になる。


「…あの、お姉さんって」

「もういいでしょ、その話、先生に関係あります?」


きっと睨み付けるような一瞥を投げ、有馬さんは背中を向けて、行ってしまった。最近改修されてきれいになった跨線橋を、渡っていく姿を呆然と見つめた。

あの嵐の明けた朝、律己くんの目覚めからすぐに、高速バスやタクシーを乗り継いでどうにか帰り着いた莉々ちゃんのお母さんから連絡があり、二時間もしないうちに開園の準備をする時間になり、交通機関が復活していないため来られないスタッフが出たり休みの連絡を保護者から受けたり。

結局あの話は、あそこで途切れてしまった。

その後はまた、慌ただしい日々。有馬さんとはシフトによって登園か降園時に一瞬会えはするものの、話の続きをするような機会は当然なく。

…気になっていたんです。

それってそんなにおかしいことですか。

私、関係ありませんか?
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