阿倍黎次は目立たない。(12/10更新)
#2 金野紋太は卑しい。
「もうちょっとで着くから」

俺達はタクシーに乗り、日野がマネージャーと待ち合わせをしているという場所に向かっていた。タクシー代は日野が出してくれるとのことだが、俺は財布に手を伸ばしていた。カバンはまだ学校にあるが、大したものは入れていないはずだ。

「にしてもいいのか? 何でもない俺がこんな所まで来て」
「ええ。金野を潰すにあたって、私じゃできない仕事もあるし」
「何だよ、もう計画みたいなのあるのかよ?」
「ドラマにも何度か出てるから。色々とシナリオは頭の中に残ってるの」

どんな女でも怖い面がある、ということを確認したその時、タクシーが止まった。

「じゃあ、これで」
「はい、どうも」

タクシーを降りる。高いビルの日陰を少し歩くと、俺達に手を振っている女性がいた。

「こっちこっち……って、あれ? この子は?」

日野とよく似て、背の高く顔の整った女性だった。類は友を呼ぶ、というものだろうか。

「私のクラスメートの阿倍黎次くん。今回の件で協力してくれるんだって」
「あっ、どうも、阿倍です」

普段こんなことはそうそうないため、どう挨拶していいか分からず、とりあえず頭を下げた。

「こちらこそよろしく。日野のマネージャーの琵琶美子(ビワ・ミコ)です」

琵琶さんは名刺を取り出し、俺に渡した。受け取ったはいいがどこにしまえばいいか分からず、とりあえず定期入れに差し込んだ。

「2人とも、ひとまず中に入ろう。話長くなっちゃうし」
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