君が見せてくれた、私の世界

薄紅の花が散った空は

あれから、数日。
大学の講義はまだ4月だというのに、容赦なく進んでいく。


課題だって多いし、教授たちの講義の進め方だって早すぎる。


これから、6年やってけるか……?



「ねー、千暁。」


「ん…ちょい待て。」



大学で知り合った、友人の1人に声をかけられる。
同じ医学部の七瀬という男。


一翔とは系統の違う、ふわふわしたやつ。
全体的に色素の薄いその儚げな容姿がうちの大学では人気ある。

ちなみに…俺と塾が一緒だった明智 巴の彼氏だから他の女には目もくれない。



「1年生なのに頑張るね〜。」


「…まぁな。」


「あ、そうそう。
今日、巴が一緒にランチしようってさ。」


「無理。」


「えー。どうしても無理ー?」


「ん。無理。」



これから想世架の家行くんだよ。


七瀬にも、明智にも想世架のことは詳しく話していない。

ただ、彼女はいるとだけ。



「彼女のところ?」


「そう。
分かってんなら、誘わなくていいって。」


「昨日もそう言ってたねー。
今日くらい、ダメ?」



こてん、と。

あざとい七瀬が首をかしげたとき、講義室にヒールの音が響いた。





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