マドンナリリーの花言葉

それから数年たったある日、エーリヒは家族の肖像画を頼んだ画家から、闇市に掘り出し物が流れるという話を聞き、久方ぶりにパウラのことに思いを馳せた。

彼女の実家は没落し、残された家財道具はすべて闇市に流れてしまったと聞く。もしかしたら、パウラの肖像画も闇市にあるのではないかと思ったのだ。

エーリヒは友人だったモーリッツ=ドーレ男爵に協力を仰ぎ、いろいろな闇市をめぐり、実家を訪れてパウラにドーレ男爵を紹介した。
男爵には妻も子もあったが、彼女の美しさは彼を魅了したようだった。

とはいえ男爵は潔癖な男で、結婚している身だからとパウラに手を出すようなことはなかった。
ただ、力になりたい。笑ってほしいと、彼女のために尽力した。

そして、ついにとある闇市で肖像画を見つけ出したのだ。

肖像画は一度闇市に流れた後、製作者である画家がその手に取り戻したらしい。
しかし、彼は画家としては大成せず、思い出を振り切るために再び闇市へと流したのだそうだ。

ドーレ男爵はその男・ベルンハルトの所在を突き止め、パウラを救ってやってほしいと懇願した。


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