マドンナリリーの花言葉

結局、ローゼはディルクを家にあげた。

花農園では、加工品の生産もしているので、いたるところにドライフラワーにするために花が干されている。
母がお茶を出して、ディルクは興味深げに辺りを見回している。
しばらく母親にディルクの相手を任せ、その間にローゼは農園に行くことにした。

家のすぐ裏手に広がる農園は広い。季節ごとに咲く花を区分けしてあり、温室も作られている。ローゼは、父親を捜して歩き回った。どうやら奥の温室で作業中らしい。


「パパ。久しぶりね」

「ローゼじゃないか! どうした? 帰ってくる気になったか?」

「いやだ、違うわよ。お休みを貰ったから顔を見に来たの。すぐ戻らなきゃいけないんだけど」

「来たばかりじゃないか。ゆっくりしていけばいいのに」


大柄な父親に飛びつくと、ぎゅうと力いっぱい抱き締め返してくれる。

仕事中の父親は淡白だが、酒を飲みだすと絡みだす。ここは早々に退散したほうがいい、ましてディルクには会わせないほうがいい、とローゼは判断した。


「パパのお仕事は素敵ね。お屋敷に入って改めて思ったわ。伯爵さまのお屋敷を華やかで素敵に見せてくれるの」

「そうかそうか」

「だからパパ、これからもお仕事頑張ってね。私、もう行くけど、パパの花を見ると元気になれるから、しっかり育ててあげてね」


見送ろうとする父親を何とか牽制し、ひとり、家の中に戻ると、ディルクと母親が、ノートを見ながら話しこんでいた。

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