ハニー♡トースト
暗い意識の中で、誰かの声がする。
うまく、聞き取れない。
それはだんだん大きくなって、
(…泣き声?)
ハッとして横を見ると、お父さんの泣き顔が視界に入る。
ひそひそひそ、と大勢の人の囁き声が耳に集中する。
かわいそうにね、まだ若いのに。残された子は…父親もね、1人で育てていくのかしら…
(…嫌だ、いやだ、いやだいやだ…)
私は耳を塞いでうずくまる。
ねえ、お母さん、どうして?
どうして私たちをこんなに苦しめるの?
どうして、お母さんは死んじゃったの?
部屋の隅で声を殺して泣いているお父さんの背中。
私、知ってるよ。今でもたまにお父さんが泣いてるの。
お父さんが夢でうなされてるの、知ってる。
お母さん…
もうこれ以上、お父さんを苦しめないで。
私ね、私…
今でもお母さんの顔が思い出せないの…