君の瞳にわたしが映っても(完)
相川は髪をくしゃっと掻き上げた。
「まいったなー。まさか玲に話すとは…な。」
困ったように笑う彼。
「でも、小さい頃から相談とか、全部お前にしかしてなかったしな、俺。」
「えっ?」
「他の人になんか言えねーよ。なんつーか、お前なら、ちゃんとわか
ってくれるような気がしたっていうか、その、心強かったんだよ。」
トクン。
赤くなって早口で語る相川に、自分まで頰が火照ってくる。
それって…わたしのことだけは信頼してくれてたってこと?
ねえ、わたしバカだから、誤解しちゃうよ?
「お袋…他の男作って…出てった。」
「え…。」
相川の表情は影になってわからない。
だけどいつもわたしがきたらクッキーを焼いてくれた、あの優しいおばさんが出て行ったなんて…
「だから、今は親父と二人暮らし。姉ちゃんは去年結婚してさ、家庭を持ってるから迷惑もかけられないし。」