君の瞳にわたしが映っても(完)
無神経なことを聞いているのはわかっていた。
仮にも別れたばかりの彼女のことなんだから。
それでも、今聞かないといけないような気がした。
いや、違う。今、どこか夢心地なこの瞬間に聞かないと…もう、自分から聞く勇気がなくなるような気がした。
夕焼けが相川の横顔を赤く染めてゆく。
グランドの生徒はいつの間にかいなくなっていて、知らないうちに二人きりになっていた。
どこかでカラスが鳴いている。
遠くの工場からカンカンカンと音がする。
「柚は…妹みたいな存在だった。」
わたしは黙って続きを待つ。
「好き…とは、違った…かな。」
彼の口から聞きたかった。
ちゃんと伝えて欲しかった。