彼の笑顔に出逢いたい
「……………」

「……………」


バス停で待つのは私達二人しかいなくて、気まずい空気が流れる。


もしかしたら、そう感じているのは私だけかもしれないけれど。


彼の前に立っているのだから当たり前といえば当たり前なんだけど、背中に結城さんの視線を痛いほど感じていた。


少し前ならこの距離感が普通だったのに、今は何も話さずに背を向けている方が不自然になっていた。


だけど今は笑って話せる気がしなくて、ただ前を見てひたすらバスを待つしかなかった。


今日は私の方が無愛想になっていた。


「…い……おい!」


考え事をしていたせいで、ぼうっとしていたら呼ばれていることにすぐに気付けなかった。


「は、はい!」


慌てて返事をして振り返ると、なんとも言えない表情をした彼が私を見ていた。


彼の代名詞でもある “無愛想” でも “不機嫌”でもない。


捨てられた子犬…なんて可愛らしい表現は、彼には似合わないけど、大げさに言えばそんな感じ。







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