彼の笑顔に出逢いたい
右隣の伊坂さんは、居酒屋の時よりもフレンドリーに接してきた。


話しかけてくる距離感もカラオケという場所柄のせいか、やけに近く感じた。


聞こえなくて「…え?」と聞き返すと、顔を寄せてきた伊坂さんの生暖かな息が耳にかかり入ってきたその言葉に瞬間、ゾワっと鳥肌が立つ。


「後で、二人にならない?」


寒くもなく、むしろ室内は熱気でエアコンが効いていても若干暑いくらいなのに。


とっさに伊坂さんとは反対側のお尻の横に手をつき、相手に勘付かれないように微妙に距離を取る。


その時、椅子についたその手に何かが触れた。


驚いて自分のその手を見ると、結城さんの手が突ついていた。


「さっき言い忘れてたけど、帰りも一緒だからな。」


顔を寄せられボソッと言われたその言葉には嫌悪感は一切なく、心拍数が急上昇していく。


有無を言わさない言い方に顔を赤く染めながらも素直に首を縦にした。
< 111 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop