彼の笑顔に出逢いたい
離れていく結城さんの背中を見送る私に、運転手さんがバックミラーから遠慮がちに視線を向け声をかけてきた。


「あの、それでは出発してもよろしいですか?」


そう聞かれ、一瞬迷う。

結城さんはこの後、どうやって帰るのだろう?

ここからだと歩いて帰れなくはない距離だから、一人で歩いて帰るつもりなのかも。


「…すみません。やっぱり私もここで降ります。」


気づいたらそう言って、走り去るタクシーのテールランプを見送っていた。

さて降りたはいいけど、どうしようか。

結城さんのアパートの前に佇んだまま、彼らが入っていった2階の角部屋を見上げた。

勝手に人の家に入るわけにはいかないし、そんな事を思いながら数分経った頃だろうか。

ガチャッとドアが開く音が聞こえ、反射的に顔を上げた。
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