イジワル上司の甘い毒牙

「ど、どうすれば……」

「ちょっと遊んであげて」


そう言い残して、寝室を後にした日高さん。

私の腕の中で不満そうに低い声を上げる猫にどうしたらいいかわからず、とりあえず膝の上に置いてみた。

動物なんて飼ったことも、こんなに近くにいたこともないから対応に困る。触らずにじっと見下ろしていると、猫は私の手に尻尾を軽く叩きつけてきた。


(な、何だろう?何か訴えてきてるのはわかるけど、どうしたらいいの?)

猫の考えていることなんてわかるはずもなく、降参のポーズを取っていると餌皿と大きな袋を持って日高さんが戻ってきた。

すると彼が目を丸くして私と猫を凝視するから、私は密かに冷や汗を流していた。


「佐倉さん、凄いね。もう諭吉と仲良くなったんだ」

「仲良く……は、なってないと思います……」

「でも、ほら、逃げないし」


私の膝の上の猫を指差して、日高さんは笑った。

餌入れが床に置かれ、餌を投入すればすぐに猫の興味はそちらに行ってしまったけど。

勢いよくご飯を食べる猫の頭を撫でながら、日高さんは少し気まずそうに、重たい口を開いた。


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