イジワル上司の甘い毒牙
「……み、見ました……?」
「え?」
何に対しての言葉なのかわからなかったらしく、日高さんは首をひねった。
「そ、その……さ、サイズ、とか……」
口ぶりからして、下着を買う際に日高さんも立ち会ったのかと思って、恐る恐るそう聞いてみた。
お世辞にも私はあまり胸が大きい方ではなく、細身だから、服を着たらそこそこに見えるだけだ。
「……何も、見てない、よ」
いつもは自信に満ちていて、淀みも取っかかりもない真っ直ぐな声が揺らいで、そっと目を逸らされた。
いっそのこと笑い飛ばしてからかってくれたら、まだ気が楽だったのに。
いや、日高さんはそんな人ではないから、無理だ。
「……へ、変なこと聞いてごめんなさい」
「ううん、大丈夫」
二人の間に微妙な空気が流れて、互いに目を逸らしたまま押し黙る。
その沈黙を破ったのは、私の前髪からポタリ、と床に落ちた水滴だった。