イジワル上司の甘い毒牙
「佐倉さん、どうかした?」
私の悲鳴を聞いて、心配してくれたらしい日高さんの声が扉の向こうから聞こえてきた。
私は咄嗟にタオルを身体に巻き付けて、内側から身体で扉を押さえ付けるようにした。
「あああっ!開けないで!大丈夫だから開けないでくださいっ!」
ガタガタと音を立てて押し開けようとしてくる扉を全力で押さえ付けて、私は必死にそう訴えかけた。
「そう?」
私の悲痛な……いや、元気そうな声を聞いて大丈夫だということは伝わったのか、日高さんはあっさりと引き下がったようだった。
「……嘘でしょ」
もう一度カゴの方に視線を向けると、黒と紫の布が視界に入る。通常のものより少しだけ布面積の少ない、いわゆる勝負下着だった。
何を思ってその下着を買ったのか、これを買う際に日高さんも立ち合ったのかと色々と聞きたいことはある。
恐らく私が記憶を飛ばしているということは、まともに判断ができない状態だったんだろう。いや、これ以上考えるのはやめよう。思い出さなくても、いい気がする。
ため息をつきながら扉から離れて、カゴの中から下着を引っ張り出した。