イジワル上司の甘い毒牙
「不安なら、俺の手を縛り上げてもいいよ」
連行される犯罪者のように両手を合わせて腕を差し出してくるので、私は慌てて首を横に振った。
「そ、そんなつもりはないです」
日高さんに何かされるのでは、なんて思っていない。
この数ヶ月、彼には裏表が人よりも激しい側面はあるけど、他人が嫌がるようなことはしない人だということはよくわかった。
表向きの完璧な王子様のような振る舞いをずっと見ていたから、最初こそ警戒心を剥き出しにしていたけど、今の方がよほど人間味があって、一緒にいて安心する。
では何故近付けないかと言うと、私自身の問題になる。
この距離でさえ心臓が痛いのに、彼に触れたり触れられたら、壊れてしまうんじゃないかと不安で、一歩を踏み出せない。