唯少女論
最中さん。
桜木さん。
その距離が遠い。
「ねえ、桜木さん。アタシも———わもかちゃんって呼んでいい?」
「うん。………私は、何て呼べばいい? 最中さん? それとも———唯理さん?」
「唯理でいいよ」
「じゃあ、唯理さん」
そう言って彼女は照れ笑いを浮かべる。
一つ一つ、何もかもかわいい。
「アタシの下の名前知っててくれたんだ?」
「シャルがいつも唯理って呼んでるじゃない? だからね」
呼び捨てでもアタシは一向にかまわないんだけどな。
「唯理さん。卒アル係り、ほんとうは他のヒトとがよかった?」
「え? 何で? わもかちゃんとでうれしいよ」
「私達、今まで話したことなかったじゃない? だから、同じグループのヒトがよかったのかなって」
「そんなことないって。アタシ、わもかちゃんと話してみたかったし」
「ほんとう?」
少し首を傾げて聞き返す姿は小動物のようで、ほんとうにかわいく思えた。
「うん。だから、友達になってよ」
友達。
それでよかったんだろうか。
「………私でよければ」
「じゃあ、ケータイの番号教えてよ。メッセのID登録しちゃうから」
「私、ケータイ持ってないの」
「嘘? どうやって連絡するの?」
「お家の電話から」
「え!? マジで!?」
今時そんな子がいるなんて信じられなかった。
「うん。お兄ちゃんが高校生になるまではダメだって」
「お兄ちゃんもいるの? 何人兄弟?」
「三人だよ。お兄ちゃんとお姉ちゃんしかいないよ」
少しオーバーなアタシの反応に彼女は微笑んだ。
「わもかちゃんって末っ子なんだね。しっかりしてるから長女っぽい」
「末っ子はすぐに甘えてるって言われちゃうから。ウチ、親いなくて」
「………え?」
「お父さんは小さい頃に病気で亡くなったの。お母さんはいるのかいないのか———」
そう続けた彼女はうつむいていた視線をパッと上げた。
「ごめんね、唯理さん。こんな話。聞きたくないよね」
「そんなことないよ。ウチも似たようなもんかな。仲悪くてほとんど話さないんだよね」
「そうなんだ。私達、似てるのかも」
そうだとしたらうれしい。
「うん。似てるね」
夕暮れが迫る教室で、少しだけ彼女に近づけた気がした。
桜木さん。
その距離が遠い。
「ねえ、桜木さん。アタシも———わもかちゃんって呼んでいい?」
「うん。………私は、何て呼べばいい? 最中さん? それとも———唯理さん?」
「唯理でいいよ」
「じゃあ、唯理さん」
そう言って彼女は照れ笑いを浮かべる。
一つ一つ、何もかもかわいい。
「アタシの下の名前知っててくれたんだ?」
「シャルがいつも唯理って呼んでるじゃない? だからね」
呼び捨てでもアタシは一向にかまわないんだけどな。
「唯理さん。卒アル係り、ほんとうは他のヒトとがよかった?」
「え? 何で? わもかちゃんとでうれしいよ」
「私達、今まで話したことなかったじゃない? だから、同じグループのヒトがよかったのかなって」
「そんなことないって。アタシ、わもかちゃんと話してみたかったし」
「ほんとう?」
少し首を傾げて聞き返す姿は小動物のようで、ほんとうにかわいく思えた。
「うん。だから、友達になってよ」
友達。
それでよかったんだろうか。
「………私でよければ」
「じゃあ、ケータイの番号教えてよ。メッセのID登録しちゃうから」
「私、ケータイ持ってないの」
「嘘? どうやって連絡するの?」
「お家の電話から」
「え!? マジで!?」
今時そんな子がいるなんて信じられなかった。
「うん。お兄ちゃんが高校生になるまではダメだって」
「お兄ちゃんもいるの? 何人兄弟?」
「三人だよ。お兄ちゃんとお姉ちゃんしかいないよ」
少しオーバーなアタシの反応に彼女は微笑んだ。
「わもかちゃんって末っ子なんだね。しっかりしてるから長女っぽい」
「末っ子はすぐに甘えてるって言われちゃうから。ウチ、親いなくて」
「………え?」
「お父さんは小さい頃に病気で亡くなったの。お母さんはいるのかいないのか———」
そう続けた彼女はうつむいていた視線をパッと上げた。
「ごめんね、唯理さん。こんな話。聞きたくないよね」
「そんなことないよ。ウチも似たようなもんかな。仲悪くてほとんど話さないんだよね」
「そうなんだ。私達、似てるのかも」
そうだとしたらうれしい。
「うん。似てるね」
夕暮れが迫る教室で、少しだけ彼女に近づけた気がした。