唯少女論
「お姉ちゃん待って」



思いの外、姉の歩くスピードは遅くて私はさほど慌てることもなく追い付いた。



「かりんも何か言ってやった?」



オンナの意地悪さは姉も受け継いでいるのかもしれない。



「ううん。何も」



「そっか。かりんは優しいからね」



と姉は笑った。



私達に、父親はいない。



私が小さかった頃、この店を残して死んでしまった。



父の死後、兄はあの店を一人で切り盛りし、姉と私を育ててくれている。



その頃から、母親はいないのも同じだった。



けれど今日みたいに時々ふらっと帰ってくる。



その時は決まって男にフラレたか、ケンカをしたかのどちらかで、嫌になるくらいに酒臭い。



あのヒトに会うと私はひどく落ち込む。



自由過ぎるヒト。



悪く言えば、まだコドモだ。



そんなヒトの血を私も引いているのだと思うと憂鬱になる。



いつか私もああやって薄汚れて行くのだろうかと、母親を見て思っていた。
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