繋がる〜月の石の奇跡〜
十一章
えみと井上は電車に乗って光輝の両親が住んでいる街へと向かう。
ここは、光輝が産まれ、中学3年のときまで過ごした街だ。
井上もこの街で産まれ、光輝とは近所に住む幼馴染であった。
光輝は高校1年のときに引っ越しをし、えみと出会った。
井上もまた高校時代に他の地域に引っ越しをし、井上の家族は今は別の街に住んでいる。
光輝の家族は、光輝が亡くなった後、この街に戻ってきたのだ。


ガラガラの電車の中に、二人は近すぎず、遠すぎずの間を開けて隣合わせに座る。

光輝の両親が住んでいる街は、えみや井上が住んでいる地域と同じで海が近くにある。
えみは電車の窓から青々とした海を眺める。そして光輝と付き合っていたころの二人の姿を思い出していた。海を眺めていた目を閉じて、大きく息を吸い込む。
不思議と懐かしい、あの頃、光輝と過ごした日々の香りがしてきた。
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