繋がる〜月の石の奇跡〜
二章
次の日の朝、えみは目覚ましが鳴る前に自然に目が覚めた。
ケータイを手に取って時間を確認すると、まだ5:48だった。
続いてメールを確認する。
すると、未読メールが1件。

一瞬ドキッとしたえみは、メールボックスを開くのを躊躇う。
『光輝』
心の中でつぶやく。

そして、ケータイを枕元に戻し、洗面所へ向かう。

鏡に映る自分に言い聞かせるように話しを掛ける。

「期待しちゃだめ。」

そう言って、パンパンと自分の顔を叩く。

顔を洗って、メイクをして、髪の毛を整えて、朝ごはんのトーストを準備する。

その間も、胸のドキドキは止まらなかった。

期待しちゃダメと言い聞かせた身体は、まるで真逆の反応をしていた。

トーストには、ピーナッツバターとグレープジャムを塗り、牛乳と一緒に食べる。

洋服を着替え、今日の授業の準備と枕元のケータイをカバンに入れた。

今日も2限からだったが、図書館で勉強をするため、少し早めに家を出た。

大学に向かって歩き始め、カバンからケータイを取り出す。

ドキドキと心臓の音が聞こえるのを感じながら、メールボックスを開く。


メールはあずさからだった。

がっかりしている気持ちと開き直っている気持ちが混ざりあっていたが、がっかりしてい気持ちの方が大きく、ぐいぐいとのしかかってきた。


「今日は楽しかったね。また、明日ね!」
昨夜届いたあずさからのメール。

それを見たら、少し元気がでた。

『あず、ありがとう』

通り道のお気に入りの階段を降りて、いつものように大学へ向かう。

すると、昨日と同じくらいのところで、後ろからスタスタと足音が聞こえてきた。

『昨日と同じ人かな?』

そんなことを考えていると、えみの電話の着信音が鳴り始める。

電話をカバンから慌てて取り出すと、あずさからの着信だった。

「もしもし、あず?」
電話に出る。

その瞬間、えみの横を一人の男の子が通り過ぎていった。

「もしもし、えみ?もしもーし?」

一瞬、その男の子のことで頭がいっぱいになり、えみにはあずさの話が全く耳に入らなかった。

『あ、またこの香り。』

そして、大学に着き、図書館へ向かう。

朝が早かったので、まだ誰もいなかった。

シーンとした、静かな朝がとても穏やかで心地よかった。
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