繋がる〜月の石の奇跡〜
帰り道は、上り坂が続く道のりで、息が上がって体力もなくなっている自分に、えみは情けなさを覚えた。

今朝は留守だったいつも吠えてくる犬が、帰りはものすごい勢いで吠えてきた。

『何をそんなに訴えているのだろう』

あんな風に、思い切り声を出して叫べたら、少しは気持ちも楽になるのかもしれない。えみはそんなことを考えた。

アパートに着き、ドアを開ける。

すると、
急に、とてつもない喪失感に襲われた。

部屋の中は妙に薄暗く、全てのものが無機質でモノトーンのように見える。

一瞬、えみはダークな思考に引き込まれそうになったので、今日のあずさとの楽しい会話を必死に考える。

暫くして、気持ちが明るくなっていく。

「よし、夕飯の食材を買いに行こう!」

気持ちを切り替えて、バッと外へ飛び出す。
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