会長代行、貴方の心を全部わたしにください
会議室を出て10数メートル。


会長代行はエレベーターまで、あと2、3歩余りの所で壁に寄りかかり、うずくまっていた。


「会長代行……?」


駆け寄って声を掛け、会長代行の背中に触れると、会長代行の体が火照っていた。


「……芹沢? 眩暈がひどくて……視界が……今、社医に連絡を入れた……」


会長代行は言いながら、ネクタイを緩め、Yシャツのボタンを2つ開けた。


「どうして言ってくれないんですか? いつから具合が」


「静かに……頭に響く」


「──あっ」


わたしはハッとして口を閉じ、会長代行の背中を擦りながら、エレベーターの数字が下がってくるのを見つめた。


「芹沢……もう少しゆっくり」


「あっ、はい」


私がそう答えて、会長代行の背中を再び擦り始めると同時に、エレベーターが鳴った。
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