会長代行、貴方の心を全部わたしにください
ドアが開くなり、社医が白衣を翻し会長代行に駆け寄り、会長代行を抱き上げた。


「おい。ボーとしてないで、酸素を持て」


社医、小笠原元就は、通称元さんと呼ばれ親しまれている。


会長が浮気相手に生ませ、養育費や学費を一切面倒を看たと噂されている。


普段は親切丁寧で優しいと評判の社医が、別人だった。


私はいきなり怒鳴られ、言われるまま酸素ボンベの入った会長代行のキャリーバックを持ち上げた。


「詩乃さんから捌けないヤツが秘書に着いたとは聞いていたが、聞いていた以上だな。あんた、病状は把握しているのか?」


エレベーターの最上階、医務室。


社医は会長代行の胸に聴診器を当て、助手に指示を出しながらぼやいた。


「……元、……総代が1通り話しているけれど……あの人の説明は大雑把だから……、詩乃は大袈裟だし」


「喋るな」
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