会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「ええ、まあ……貴方に言われて戻って良かったわ。いい仕事ができたと、お礼を言われたの」

「詩乃。トラブルはチャンスだ」

「本当にそうね、実感したわ。貴方、今日は早かったのね」

「ああ。元に喧しく言われて」

「元の判断は正しいわ。貴方の秘書、もう少し機転を利かせてくれればいいのに」

「彼女はよくやってくれている。俺がスケジュールを詰め込んでいるんだ。時間は待ってくれない」

「でも……」

「ただでさえ会長不在で不安定なのに、のんびりなどしていられない」

「貴方が動かなくても重役たちに」

「詩乃は何も知らない。会長も兄たちも、その重役たちに頭を抱えていた。彼らには厳しく指示を出し、連絡と報告を徹底させている。もたついているとタイミングを逃す」

俺が話しながらキッチンに入り、鍋を温めテーブルに料理を並べると、詩乃はテーブルを見回し、目を輝かせた。
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