幸田、内緒だからな!
 父と話す前、わたしの気持ちは彼を諦める方に傾きかけていた。
 気持ちの整理がついたら、社長と秘書。
 最初の関係に戻ろうと思っていた。
 だけど、中川さんが彼の相手じゃないとわかった今、気持ちが固まった。
 確かに、中川さんじゃなかったとしても、いつか彼は誰かと結婚する。
 それまでは一緒にいたい。
 傷ついてもいい。
 その日が来るまで、今までのように彼といたい。

「お父さん、聞いた?」
『えっ? 何をだ?』
「わたしとお父さんが付き合ってるって噂があるの」
『はぁ?!』
「驚きでしょ。やっぱり一緒に帰ったのがまずかったみたい」
『悪かったな』
「いいの。お父さんは、わたしを思って社長に縁談の話がある事を早く知らせたかっただけだもん」
『知花……』
「みんなの誤解、どうやって解こうかしら?」
『普通通りしていたら、自然と忘れられてしまうんじゃないか? わたしも今まで通りの対応をする。会社では絶対馴れ馴れしい態度は取らないよ』
「ありがとう。そうね、自然が一番ね」
『ああ。それより、明日は出勤出来そうか?』
「うん。すっかり治っちゃった。今からお昼ご飯食べるね」
『ああ。それじゃ明日またな』
「ありがと」

 父との通話を終えた。
 お昼は、インスタントラーメンでも作ろうかな?
 キッチンへ行き、鍋に水を入れ火に掛けた。
 
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