幸田、内緒だからな!
「赤ちゃん、出来てました」
「まぁ、おめでとう!」

 嬉しそうに笑顔を浮かべるお母さん。
 素直に喜んでもいいのだろうか。

「あら、知花さん嬉しくないの?」
「そんな事はありません。でも、まだ直紀さんと結婚出来るって決まったわけではないし」
「大丈夫よ。こういうの、出来ちゃった結婚って言うんでしょ? おめでたい事よ」
「でも、会長が何とおっしゃるか」
「大丈夫。上手くいくわ。見てて、帰ったら面白い事が待ち受けているから」
「面白い事って?」
「内緒」

 そう言うと、お母さんは何度もクスクスと笑った。

 家に戻る。
 いつもなら出掛けていない会長が待ち構えていた。
 
「知花さん、どうだった?」
「あなた、ちょっとソファーに座らせて下さいな」
「おお、そうだったな。さぁ、ここに座りなさい」

 会長自ら、手を添えてくれる。
 どうしたの?
 何だかいつもの仏頂面の会長じゃない。

「で、どうだった?」
「出来ていました」
「子どもが、子どもが出来たんだな?」
「はい」

 わー、来る来る。
 下ろせって言われるんだ。
 泣きたい気分になった。
 どうしたらいいの、直紀、わたし怖いよ。

「よくやった」
「えっ?」
「そうか、直紀の子どもが出来たのか」
「会長?」
「どれどれ」

 近寄って来た会長が、お腹に耳を当てる。
 はぁ?
 どういう事?

「あなた、耳を当ててもまだ何も聞こえませんよ」
「そうか。でも、このお腹の中に、子どもがいるんだよな?」
「そうですよ。わたし達の孫がね」
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