【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。



「彼方、待って……!」

「柚月は先に、戻ってて」

「そんなことできないよ!」

「……どう、してっ」


突然、彼方が立ち止まる。

「ぃっ」と小さく呻き声をあげて、段ボールと紙袋をその場に置いた。


その彼方の指先は、真っ赤になっていて……


「彼方、大丈夫? ほら無茶するから……」

「……ごめん。俺、情けない」

「そんなことないよ。彼方は凄いし、頭もよくてカッコいいし、情けなくなんてない」

「情けないよ……」


顔を伏せて、ぽつりぽつりと、彼方は独り言のように呟く。


「柚月にちゃんと、好きになってもらおうって……頼ってもらおうって思ったのに」


彼方の身体が、少しだけ震えている。


「柚月のためになにかしたくて、柚月の負担を減らしたくて、でも……柚月に心配かけるばっかりで……っ」

「私もね、同じこと考えてたよ。彼方の負担が減ればって……彼方のためになにかしたいって思ってた。だから頑張ってた」

「柚月……も?」

「うん。私たち、お互いのことを心配して、から回ってたなんて……ちょっとおかしいね」


彼方のために頑張った。

彼方のために今ここにいる。

彼方のために……

彼方、の……




──違う。これは、全部嘘だ。


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