【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「全てが一番、全てが? それでは一番だなんてないのと同じなのでは? いやでも、全部が一番? そうか……」
「帝!」と鬼龍院くんが声をあげた瞬間、ある男の人が「なんでしょう?」と鬼龍院くんに近寄った。
あの人は確か、前に遊園地で会った鬼龍院くんの執事の帝さん、だよね?
「町の者に伝えよ。今からこの町の全てを一番とする!」
「全てを、でしょうか?」
「ああそうだ! だいたい、僕の町なのだから一番で当然。そして全てが一番であり全ては一番ではない。こんな僕を王子として認めてくれる民は、僕にとって一番だなんて決められないものだからな」
「王子……っ」
《なんだか急展開になってしまいましたが、こうしてこの町の王子は〝一番よりもっと大切なもの〟を覚えたのです》
「ほ、本当に急展開すぎてなにがなんだか」
「柚月、大丈夫?」
「うん、なんとか……」
「さて近衛クンとそこの白うさぎクン、君たちは女王の所に行く途中かい?」
鬼龍院くんの質問に「そうだから早くこの町を抜けたい」と彼方は返事を返す。
そして……
「よし、では僕もついて行こう!」
《チャララッチャラ~ン! 王子が、仲間に、なった!》
「え、そのチャララってやつもしかして効果音のつもりとか……」
《黙ってさっさと進んでください》
「ナレーションがなんだか辛辣っ!!」