真夏の青空、さかさまにして

わざと空けてくれているはずの隙はむしろ掛かり手を攻め立てているようだったし、普段と変わらないだろうのんびりとした声色は僕が掛かり手だったら、そんなのわかってるよ、ってイライラしてしまったかもしれない。


部員数たった6人の弱小部の主将だからって、ちょっと舐めてた。

あの人はとびきり剣道の腕が立つわけではないけど、さすが顧問がいないも同然らしい生徒だけの部活をひとりで引っ張っているだけある。ちゃんと、自分にも、周りにも厳しい人だ。


きっと今朝の練習でもあの菩薩みたいな顔で「まだ元気そうだからランニング追加しようか」とか鬼みたいなことを言い出したに違いない。うん、絶対そうだ。



「じゃ、手を合わせてください」



ぱちん、と数十分前の動作をもう一度繰り返すみんなの表情は満足げで、味噌汁を沸かした小鍋もおにぎりが大量に乗ってあった大皿ももうすべて空っぽだ。


手を合わせてから、あ、と声を漏らして真夏が僕のほうを振り向いた。だけど、僕を見てきょとんとしてから、すぐに「へへ」と嬉しそうに笑って前を向き直す。

なんだよ、言われる前に手を合わせただけだろう。嫌だったけどどうせやるから、仕方なく。それなのにあんな風に笑顔を向けられたら居心地が悪い。



「ごちそうさまでした」

「ごちそーさまでしたっ」



本当に思春期まっただ中の高校生の集まりなんだろうかと疑いたくなるくらい快活でまっすぐな声のかたまりに、僕は不本意を精一杯アピールした声を織り交ぜた。

だけど僕の小さな声だけが浮いて、混ざりきれなくて、「子どもみたい」だなんて言って一歩距離を置いた自分がこの中でいちばん子ども染みて思えた。
< 90 / 90 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

さよならメランコリー

総文字数/19,693

恋愛(その他)34ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
愛しいあなたたちが どうか どうか 不幸でありますように 笑顔の裏で囁く私は どこまでも歪で醜い物体 : * さよならメランコリー (恋する乙女は美しいだなんて幻想) 2017.08.17 本編公開 2017.10.16 本編完結
あした、地球に星が降る。

総文字数/26,102

その他60ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
緊急ニュースです 緊急ニュースです 皆さん、落ち着いて聞いてください 【あした、地球に星が降ります。】 ☆ °.・ + *, あしたは地球最後の日 あなたは誰となにをして 過ごしますか? (ーーどうか素敵な一日を) 2017.07.07 完結
蒼空~キミの名前を呼ぶ~

総文字数/95,460

青春・友情304ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
――…蒼空 ――…蒼空 キミの名前を呼ぶ。 何度でも、 何度でも、 キミの名前を呼ぶよ。 ねぇ、蒼空は幸せだった? .゚+*。..☆..。*+゚. キミ色に染められた あたしのココロ この声が、キミに 届きますように――…。 .゚+*。..☆..。*+゚. テーマ「絆」 執筆開始 2012.10.13 執筆終了 2012.12.24 文庫発売 2013.09.25 たくさんの感想、レビュー ありがとうございます! 修正前のものです。 ※初長編小説※

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop