ミルクと砂糖は多めで
1st 救いの手を掴み取れ
「『・・・・・お祈り申し上げます』って、私は神か!?えぇ!?」

見飽きた文面を表示しながら、辺りを明るく照らすスマホをポケットに突っ込むと、ぷしっと音を立ててカクテルの缶をごくごくと飲み下す。どさっとベンチに座ると慣れないヒールを脱ぎ捨て、コンビニ袋からおにぎりを取り出した。

祈られ続けること早数十回。いい加減心は折れて、こうして22時頃の人気のない公園でやさぐれてお酒を煽っている。季節はもう秋も半ばで、周りはとっくに就職先が決まってきている。焦らずにはいられない。

「いっそのことフリーター・・・・・?いや、まずい。まずすぎる。」

独り言も饒舌になり、2本目の缶に手を伸ばしていると怒鳴り声と足音が聞こえてきた。なんだなんだ、私の晩酌を邪魔するのは。

「おいおいおじさ~ん、そんな逃げるなって!」
「そうだぜ?俺達、おじさんに逃げられると寂しい!」

下卑た笑い声を響かせているのは、この近辺の高校に通っている学生だった。私立の制服であるため、学校名がすぐ分かるくらい目立つ。そして「おじさん」と呼ばれているスーツ姿の猫背の男性は、鞄を両手に抱えて後退りしていた。

・・・もしかしなくても、これは所謂オヤジ狩りと呼ばれるカツアゲでは?幸いな事に私に気づいている者はおらず、さらにこのおじさんの被害に気づいている者も私だけだ。え、助けた方がいいのかな。
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