こっち向いて笑って、先輩!


なんで不意打ちでそういうことをサラッといっちゃうんだ。嬉しさのあまり、来原 桃、泣きそうである。


もう、何もいらないと思えるくらい。
私は今、先輩から十分もらってしまった。
この上ないくらい嬉しい。


「うっ、うっ」


「ったく、また泣くのかよ」


「嬉し泣きですもん!だって、大好きな人に自分の作ったもの褒められるんですよ?!うっ、先輩!私この体育祭、頑張りますよ!ぜっったい優勝してみせます!」


涙をゴシゴシと手で拭いてから、そう宣言する。



「悪いけど俺白組だから。優勝はさせないよ。来原は敵」


っ?!


「そ、そんな!敵とか言わないでください!」


「本当のこと言っただけだろう」


「っ、」


そうだけど……。


「まぁ、頑張って」


っ?!


先輩は、ボソッとそう言ったかと思うと、私の腕からスルリとたたまれたパイプ椅子を取り上げて、スタスタとテントの方へと行ってしまった。


「あ、ちょ、如月先輩!」


慌てて名前を呼んだけど。
どうしよう。
それどころではない。


先輩に─────。


頑張ってって言われた。


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