こっち向いて笑って、先輩!


「野村先輩……」


野村先輩のすぐ後ろには、大好きな如月先輩が立っている。


「火傷したんだって?」と付け加えた野村先輩はまた一歩私に近寄ると、氷水の入った袋で冷やしている手を心配そうに見た。


「あっ、でも、もう大丈夫ですっ」


どうしよう。せっかく如月先輩も私の様子を見にきてくれたのに顔が見れない。


さっき、川越先輩からあんなことを聞いてしまって余計に。


「……火傷以外にもどっか悪いんじゃないのか?顔色があんまり良くない」


っ?!


野村先輩の後ろで黙って見ているだけだと思っていた如月先輩が、私の方へ寄ってくると、彼の手のひらが私のおでこに触れた。


「ちょっ、」


「熱はないな……」


どうして。彼女がいるのにこんな風に触れてくるの。人一倍優しい先輩だからって、こんなの、もっと辛くなっちゃうよ。


先輩が触れてくれて嬉しいと思う分、あの時みた光景と川越先輩のセリフがふっと頭によぎって、泣きそうになる。頑張るって思ったのに全然ダメだ。


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