こっち向いて笑って、先輩!


「今の俺のこの状況を見て『可哀想』だなんて言う奴らがいたら、全員ボコボコにぶん殴る。それぐらい、俺は、自分の恋が実らなかったこと、悲しいなんて思ってないですよ」


「……」


誰かが言う。
恋心なんて、閉まったりせずにちゃんと気持ちを伝えた方がいいだなんて。
そんなの、100%、全ての状況に当てはまるとは思わない。


俺の場合がそうだ。
自分のことを恋愛対象と見ていないことをわかっていて、彼女が今一番いっしょになりたい人が誰なのかわかっていて、それなのに、あえてそれをかき乱してまで、手に入れようとは思わない。


俺なんかが、来原の心をかき乱せるなんて思っていないんだけど。


良き友でいたい。
俺たち2人に、これ以上の関係が存在しないことはわかっているから。
だからこそ、今のこの関係を大事にしたい。

『女の子として来原が好き』

だなんて絶対言わない。


俺を傷つけないように言葉を選んでくれるやつだってこと知ってるから。


俺が今まで通りしてほしいって言えばそうすることも知ってるから。


でも、今の関係には絶対戻れない。


俺が告白したことは消せない。


だったら。


秘めておいた方がうんとましだ。


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