こっち向いて笑って、先輩!
「……」
どうして俺にそんな話をするんだろうか。
興味がないっていうのに。
だいたい、来原はこの親友にどこまで話しているんだろうか。
「いい子ですよ、すごく」
ああそうか。
この子は知っているのか。来原がうるさく親友に毎日のように報告している姿が想像できる。
彼女の気持ちがどこまで本気なのか知らないけど。
「ごめんね。俺、今は誰とも付き合う気ないから。親友の君からも言っといてくれないかな。無駄だって」
─────ガラッ
1年5組。
来原の教室に着いて中を見渡す。
「あっ、あれ、桃のカバンです」
ドアの前に立ってた俺を通りすぎて、彼女が慌ててポツンと残っていたバックに目がけて走る。
「あ、あの子、携帯ここに置いたままだ」
そう言って彼女がバックのポケットからスマホを取り出した。