こっち向いて笑って、先輩!
────ガチャ
「来原っ!」
嘘──────。
なんで?
なんで、なんで、なんで。
勢いよく、古びたドアが開いたと思ったら。
大好きな声が、確かに私の名前を呼んだのが聞こえた。
幻聴かも、そう思ったのを目の前の景色がすぐにかき消した。
「き、如月先輩……」
すらっとした高身長に、切れ長の綺麗な瞳。
見間違えるわけない。
なんで大好きな先輩が、こんなところに……?
「ほんっと、こんなところで何……お前、もしかして怪我して……」
「あ、えっと、いや……」
立てなくなっている私に駆け寄ってきた先輩に驚いて、慌てて問題の場所を手で隠すように、スカートの裾をぎゅっと捕まえる。
同じ目線になった先輩が近くて、先輩の柔軟剤の香りがフワッと香って、途端に鼓動が速くなる。
近い……大好きな先輩が、すごく近い。
「これ……」
「ほ、本当ドジですよね、バカですよね、すみません。なんか引っ掛けちゃったみたいで……」