こっち向いて笑って、先輩!


「えっ、」


慌てて目線を再び先輩に向けると、脱いだカーディガンを私に差し出していた。


「これ、巻いて歩けば問題ないだろう」


「へっ、」


「仕方なく、だから。君のお友達も待ってるから、早く立ってくれる?」


「えっ、友達─────」










「あの、何から何まで本当にすみませんでした」


先輩の匂いがするカーディガンを自分の腰に巻くという異常事態の中、大好きな背中に向かって謝る。


「別に」


「変な勘違いまで……」


穴があったら入りたい。


つい暴走して、先輩とそういうことをする空気になっちゃったら、なんて。


恥ずかしすぎる。


「本当、ああいう勘違いはやめてほしいね。あとで騒ぎになると色々と迷惑だからしたことだから」


「うっ、反省しています」


『迷惑』
毎日のように放課後先輩に会いに行ってそんな言葉をかけられていた時もあったのに。今の方が断然、グサッときてしまった。


「なんでちゃんと思ってること言わないんだよ。買い出しの時だってそうだ」


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