こっち向いて笑って、先輩!
「ご、ごめんなさ─────」
「違うだろ」
「えっ、」
先輩の声がさっきよりもクリアになったので顔を上げると、前に進んでいた先輩が、足を止めて振り返ってから私の方に体を向けていた。
「それは君のいうセリフじゃないでしょ」
「……っ」
真壁くんのことも担任の先生のことも、本当はわかってる。自分でもわかってるのにうまくできない自分が情けない。
「そーいうとこ、君の友達すごい心配してるよ」
「あっ、」
先輩はボソッと話すと、くるっと体の向きを直してからスタスタとどんどん前を歩いていく。
ほら。
何だかんだ、先輩の言動には優しさが散りばめられてる。
だからまた余計好きになってしまう。
迷惑かけられたのに、私が謝ることじゃない、なんて。そんなこと言える人なかなかいないよ。