こっち向いて笑って、先輩!


私は、まだ何か言いたそうな飯田を置いて走って教室を出る。


『なんだかんだね、男は料理のうまい女に弱いのよ』


昨日、マフィンを作るのを手伝ってくれたみっちゃんがそんなことを言ってたっけ。


そうだ。勉強も運動も対してできるわけじゃないし、顔だって可愛い方ではない。


そんな私を先輩が少しでも女としてみてくれるなら、なんだって頑張るもん。


この間来たばかりの3年棟。


購買から帰ってきたり休憩中の先輩方でなかなか混雑している。


わぁ、これたどり着けるかな。


「すみませんっ、すみませんっ」


そう声を出しながら、階段を登る。


前は飯田がいてくれて心強かったけど、今は1人。流されないようにしなくちゃ。


「なんかちっちゃいのがほろほろしてると思ったら〜この間の1年生!」


「あれ、確かこの子、如月に付きまとってる子だよね?」


男女1組の先輩たちがこちらに気づいて近寄ってくる。


おぅ、やっぱり捕まっちゃうのね。


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