こっち向いて笑って、先輩!


「ありがとう、教えてくれて。ここはもう大丈夫だから!バイト行ってきて!」


私がそう明るく言うと「ごめんね、来原さん」と申し訳なさそうにしてから教室を後にした。


二度三度許すとこんなに調子に乗っちゃうもんなの?明らかになめられてるじゃん私。


「はぁ……」


誰もいなくなった教室で1人、ため息をつく。
本当は早くあの真壁くんをどうにかしなきゃいけないことくらいわかっているけど……。


怖いなぁ。
嫌われたくないし、目をつけられたくない。
穏やかな高校生活を送りたいよ。


仕方がない。
あと少し、一人でやるか。


明日からは本格的に体育祭の練習も始まっちゃうし、今日までに終わらさねば。


誰もいないことをいいことに、制服をジャージにさっと着替える。


今日体育あってよかったぁ。


「よっこいしょ!」


ロッカーの前に乾かされている学級旗を一生懸命一人で持ってベランダへと向かう。


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