私と結婚してください。
━━━で、歩くこと10分。
「ちょ、休憩…」
「……本当に大丈夫か?」
駅南のあの店まで徒歩10分ちょいでつく予定だったのに。慣れない松葉杖でなんとまだ駅にすら辿り着けず……
しかもかなり疲れた…腕と足が……
「タクシー乗った方がいいんじゃね?
無理すると今後に響くぞ?
雨降ってたから滑るところもあるだろうし」
「んー…、そうだね
せっかくここまで来たけど仕方ないか…」
あと少し、あと少しの距離なのに
結局速水が通りに出てタクシーを拾ってくれる始末。
「ほら、乗れよ。」
「ごめんね、ありがと」
「気にすんなよ~。友達だろ?」
……本当いいやつだなぁ…
普通科にいた頃はサラッと付き合ってたからわからなかったけど、離れて気づくことって多いよなぁ
「ところで今日吉良は?」
「お友だちと遊びにいった。
私を置いてね。」
「うわ、まじか。それは辛いな。」
「でしょ?
今日は朝から口論ばっかで疲れたからもういいやって感じでね。」
「でもお前の足を心配して連れていかなかったんだろ?」
「・・・まぁ」
「なのにお前今出掛けてていいわけ?
吉良は知ってんの?」
「知らないよ。言ったら絶対反対だもん。」
「はぁ?
お前なぁ…、じゃあ買ったらさっさと帰るぞ。」
「えー、ご飯も食べてこうよ。」
「寮に帰ればあるだろ。」
「あるけど一人のご飯なんて美味しくないよ。
私生まれてからずーっと椎依と一緒だったから一人のご飯なんて経験値かなり浅いもん」
いつだって、私には椎依がいた。
椎依がいない日なんて私にはなかった。
……だけど、一回だけ
たった一回だけ、椎依が怪我した時家に誰もいなくて、私一人でご飯を食べたことがあるけど
━━━味が、なかった。
彩りがなかった。
ひとりぼっちのご飯は寂しかったんだ。
ご飯は誰かと食べるから美味しいんだ。
「ね、お願い!」
「……ったく、しかたねぇな」
「やったね!ありがと!」