私と結婚してください。



あんな音を出す凰成だから、いきなり譜面を弾くのは無理。
とにかく基礎から、1からやらなきゃだめなんだ。


「はい、まず姿勢からね」

「そんなとこからかよ…」

「そうだよ!そしたらバイオリンはこう構えて…
そうそう、指は軽く、だけど強く確実に押さえて
力まないで、すっとこのまま弾いて」


ひとつひとつ、丁寧に教えながら手を添えて教える。
大丈夫。丁寧にやれば、難しいことはないんだ。

私から弦は見えないけど…感覚だけで凰成の腕をすっと動かすと


"ファンっ"

と、綺麗な音が出た。


「ほら!できたじゃん!!
きれいな音だよ!」

「…別に、今のは希依とやったからだろ」

「それだけじゃないよ!
だって指の細かいところとか、力加減とか私やってないもん!
凰成が一人でやったことだよ!すごいよ!」

「…なんで希依がそんな喜んでんだよ」

「え?……だって、なんか初めて凰成の役にたてたから。
なんか嬉しくて」


これまで、ずっと足を引っ張ってばっかりだったから。
勉強も、運動も。私はいつも教えてもらう側だったから。

こんな私でも、凰成の役にたてたんだもん。
それで成果がでたんだもん。

こんなに嬉しいことって、他では知らないよ。


< 261 / 419 >

この作品をシェア

pagetop