私と結婚してください。
あんな音を出す凰成だから、いきなり譜面を弾くのは無理。
とにかく基礎から、1からやらなきゃだめなんだ。
「はい、まず姿勢からね」
「そんなとこからかよ…」
「そうだよ!そしたらバイオリンはこう構えて…
そうそう、指は軽く、だけど強く確実に押さえて
力まないで、すっとこのまま弾いて」
ひとつひとつ、丁寧に教えながら手を添えて教える。
大丈夫。丁寧にやれば、難しいことはないんだ。
私から弦は見えないけど…感覚だけで凰成の腕をすっと動かすと
"ファンっ"
と、綺麗な音が出た。
「ほら!できたじゃん!!
きれいな音だよ!」
「…別に、今のは希依とやったからだろ」
「それだけじゃないよ!
だって指の細かいところとか、力加減とか私やってないもん!
凰成が一人でやったことだよ!すごいよ!」
「…なんで希依がそんな喜んでんだよ」
「え?……だって、なんか初めて凰成の役にたてたから。
なんか嬉しくて」
これまで、ずっと足を引っ張ってばっかりだったから。
勉強も、運動も。私はいつも教えてもらう側だったから。
こんな私でも、凰成の役にたてたんだもん。
それで成果がでたんだもん。
こんなに嬉しいことって、他では知らないよ。