私と結婚してください。
音が出たことが嬉しくて、そこからはひたすら同じことの繰り返し。
どんどん先に進んだって、絶対にどこかで壁にぶつかる。
少しずつでいい。ひとつずつ、確実に進んでいけば、絶対にいつか見違えるほど上達するから。
その甲斐もあり、凰成の技術はこの昼休みでグーんと伸びた。
「これなら2週間後のテストの時にはもっと上達してるよ!」
予鈴がなり、私たちは片付けて教室へ戻る準備をする。
まぁ、片付けといっても大したことはないんだけどね。
「…希依」
「ん?」
「ありがとな」
「…な、なに?
どうしたの、急に」
「は?教わったんだから普通礼くらい言うだろ」
「そうだけど!
凰成がそんなん言うの珍しいから…」
「うるせぇよ。
ほら、教室戻るぞ」
凰成がお礼、か…
本当に、本当に変わったなぁ…
どんどん優しくなるじゃん。
「さっさと来いよ。置いてくぞ」
「あ、待ってー」
さっさと練習部屋を出ていく凰成を追いかけて私も部屋を出たとき
"~♪~♪~♪"
私のスマホが電話を知らせる音を鳴らした。
「あ、ちょ待っ…
……お母さん?」
なに?珍しい。しかもこんな時間に。
「もしもし?なに?もうすぐ授業なんだけど」
『あ、希依!?
急で悪いんだけど、今日の夕飯は一緒に食べましょう』
「え、うん
それは全然いいいんだけど急になんで?」
『それが…兼城さんが…』
「え?…なんで?どういうこと?」
『うちも断りきれないのよ…
お父さんの立場もあるし…だから希依、今日だけお願い』
「え!やだよ!」
『希依、これもお父さんのためだと思って。ね?
じゃあ18時には自宅に戻ってね。じゃあ』
「え!?ちょ、お母さん!
…って切れたし…」