社長、僭越ながら申し上げます!
1日慣れないヒールで歩き足が棒になった…

「あと何かございますか?」

最後に社長に確認に行くと

「大丈夫、もう上がっていいよ乃菊」

「有り難うございます。お疲れ様でした」

さて帰ろうと用意をし始めて
ふと固まってしまった

(あ、荷物を家に取りに行かないと…)

昨夜は社長が何着か用意してくれた着替えを着たが
下着も何もかも家に置きっぱなしだ…

「あ、乃菊…帰りは迎えの車が来るから
乗って行くんだよ…これは鍵ね」

社長は私に銀色のカードを手渡す

「コンシェルジュにも連絡してあるから
安心して帰るんだよ?一緒に帰れなくて
ごめんな…」

ナデナデ

社長の長い指が私の頭を優しく撫でる

「はい…」





地下駐車場に行くと昨夜送ってくれた車が停まっていて中から運転手の方が迎えてくれた


「お疲れ様でした眞山さま…」

「有り難うございます…あの、お名前は」

私が運転手さんに名前を聞くと
彼はびっくりして目を見開いた

「私は佐山と申します…」

「よろしくお願いいたします佐山さん」

頭を下げると佐山さんは嬉そうに微笑んだ

「安全運転で参りますので
どうぞ車内では寛いでください」

「はい!」


走り出してから私は佐山さんに話をした

「あの…もし出来ればなのですが
私の元の家に寄ることは出来ますか?」

「どうかいたしましたか?」

「荷物を取りに行ければなぁと…」

「なるほど…少々お待ち下さい」

佐山さんはヘッドセットで話を始めた

「お疲れ様です佐山です。湊さま
眞山さまが元の家に寄りたいとの事ですが
…はい、えぇ…畏まりました…お伝えします
では失礼致します」

「眞山さま
荷物は全て新しい部屋に運び込まれているようですのでお寄りになる必要はないそうです」

「え?どうして?」

なぜ?鍵は私しか持っていないのに!

「…事情は湊さまに聞いて頂ければと
私は事実のみしかお伝え出来ませんので
…マンションにお送りしますが買い物などはございますか?」

佐山さんは淡々と告げたのでこれ以上聞いても答えは得られないだろうと次の事を考えた

「あの…食材を買いにスーパーに寄りたいです」

「畏まりました、お供致します」

たぶんここで私が断ることはしない方が良いのだろう

「お願いします」

すると、佐山さんは鏡越しに嬉そうに頷いた

「畏まりました」


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