社長、僭越ながら申し上げます!
「ところで乃菊、すごく食べちゃいたい格好だけど…食べていいの?」

ぼんやり考えていた私に湊さんが
いたずらっ子の顔でこちらを見て唇をペロリと可愛らしく舐めてみせた

「へ?は?うわー!着替えてきます!」

まだ湊さんは起きていないかと油断して
下着と大きめのTシャツ一枚で歩いてしまった

(不覚…気が緩みすぎた…)

「別にいいんだよ?自由に寛いで。
…ここは乃菊の家なんだから」

背中にそんな声が聞こえたけれど

さすがに居候の身…

自室までもらっているのだからキチンとしようと
改めて思った

急いで着替えるとダイニングへ向かう

「す、すみませんでした…うわ、美味しそう!」

テーブルには美味しそうなとサラダとベーコン

シリアルなどが並んでいた

「作れないから袋から出すだけでごめんね
パンは今温めてるから」

「いえ!嬉しいです…」

湊さんがわざわざ用意してくれたなんて

(贅沢過ぎる…)

「じゃあせめて、珈琲淹れますね?」

「うん…有り難う」

イチダの製品で私がずっと飲んでいるドリップ珈琲を丁寧に淹れる

淹れている間にパンの良い薫りがしてきて
同じくらいに出来上がった

「クロワッサン!」

見た目からパリっとしていそうで
私は思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう

「さ、食べよう」

湊さんと向かいあってダイニングテーブルで朝ごはん

(うう。美味しい!!)

「湊さん!パリパリですよクロワッサン!
美味しい…幸せです!」

食べたことないようなバターの芳醇な香りに
濃厚でさっぱりとした味、パリパリの食感

(くー!佐山さん凄いです!)


幸せを噛み締めていると

湊さんが呟いた

「乃菊がここに来て初めて一緒に朝ごはん食べたね…やっぱり新婚みたいでいいな」

パリパリと二人が咀嚼するパンの音がする

「ですから湊さん、私は…」

この人は本当は遠い人、分かってる

いつかは社長夫人に相応しい方をこの家に住まわせるだろう

「分かってる…今はそれでいいよ」

湊さんも私もその後は「旨い」しか言わずに

食事をした



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