気まぐれ猫くんの手懐け方

駅前では、猫君が不機嫌そうに腕を組んで待っていてくれていた。


「猫くん!」


名前を呼ぶ。

私の声に気づいた猫くんが、周りをきょろきょろして私の姿を探してくれていた。


「猫くん、お待たせ」


小走りで猫くんのもとへ行き、声をかける。

早まる呼吸を必死に抑えるため、大きく息をはいた。


「遅くなってごめんね?」


ゆっくりと猫くんを見れば、驚いたように目をまんまるにしていた。

けれど私と目が合った時すぐに、先ほどの不機嫌そうな表情に戻ってしまう。


「なに、そのかっこ」


ああ、怒ってる。

やっぱり私が遅刻してきたこと怒ってるんだ。

だってめっちゃ声低いもん!!!!


「あ、あの…ごめん、やっぱり似合ってない、よね…」


わかってる、自分でも似合ってないって思ってるもん。



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