ねぇ、顔を見せてよ
グズグズと鼻を啜りながら

パンを食べて、私はモヤモヤを話した

「…と言うわけで、伏見くんは私なんて好きになるわけなかったんです…なのに…ううう…」

私の話を相槌を打ちながら聞いていたお姉さんが
フフフと笑った

「私がその『伏見くん』の行動を聞いていると
貴女の事がものすごく好きなんだって感じるわよ?」

「え…」

「だって2ヶ月?どうでもいいと思う女の子なら
泊まらせるなんて事したら…
さっさと抱いてそう言うコト楽しんでると思うの
…そうじゃなくて貴女が大事だから
手を出さないんじゃない?」

「でも、大人のお付き合いってすぐに
身体の関係になるものなんですよね?」

漫画や小説なら
『好きだよ』のあとはチューってして
服脱いでベッドに行くもの!

至って真剣にそう話すとお姉さんが吹き出した

「プフ…かっ可愛い!貴女、ホントに可愛い!
私は伏見くんの気持ち分かるかも…」

「何かおかしいですか?」

「ううん…」

お姉さんがお腹を抱えて笑いながら
私の頭を撫でた

「純粋すぎて汚したくないのよ、きっと。
貴女のお名前は?
私は紗由理、嵯峨紗由理(さがさゆり)」

「山多紅子です」

「お友だちになりましょ?大好き可愛い子」

自分こそ可愛いのにそんな事を言いながら
紗由理さんは私に握手を求めた

「よ、よろしくお願い致します」

その時、奥から恐ろしく顔の整った男性が現れた

(え?俳優さん?)

キラキラとしたアーモンド型の目に
高い鼻、唇は少女のように赤くて厚みがあるが
眉がキリリとしていて、顔立ちは男性的

身長が高くスラリとしていて
肩幅があるからか、コックコートが様になる

「紗由理、上なら平気じゃないか?」

「うん……紅子ちゃんよかったら泊まって行かない?
もうこんな時間だし」

「いいんですか?」

確かに時計は22時を指していていつの間にか店舗の入り口は閉まっていた

「うん、私はこの上に一人で住んでるの
だから気にしないで来て?
彼は兄で、隣の家に家族と住んでるのよ」

二人は兄妹らしかった

ちょうど泊まる準備もしていたし、帰っても一人で辛いかもしれない……

私は紗由理さんの提案に乗ることにした

「お世話になります」

「よーし!パジャマパーティーしちゃう?」

ワクワクして鼻歌混じりの紗由理さん
私も少しワクワクしていた

「明日も早いからほどほどにな、じゃあごゆっくり」

「はぁい」

お兄さんに釘を刺されたあと
二人で店舗の奥から2階へ登った……










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