ねぇ、顔を見せてよ
コンコン

ドアがノックされて私たちは慌てて身体を離した

「は、はい…」

「フフフ、誤解は解けたかしら」

「はい……一応」

私は恥ずかしさに俯いてしまうと伏見くんが頭を下げた

「有り難うございました……」

「いえいえ、良かったわね?紅子ちゃん」

紗由理さんはとても華やかな笑顔で
私の手を取り、ブンブンと振った

「あの紗由理さん有り難うございました」

「後日お礼に参ります…お騒がせしました」

帰るよ、と伏見くんが譲らないので
車で来ていると言うので貸していただいた服のまま
伏見くんと帰ることになった

「残念だな、また遊びにいらしてね?」

「御世話になりました」

パタン

閉まった扉の外で伏見くんが私を抱き抱えた

「うわっ、やだ離して!」

「離さない……絶対離さない…」

伏見くんはそのまま私の事を車まで運ぶと助手席に座らせてくれた

「伏見くん車あったの?」

「ないよ、実家の借りた…行くよ?」

「はい…」

無言になってしまう車内で伏見くんが私に小さなアルバムを渡した

「見て?そっくり姉弟だから…」

開くと…確かによく似たかわいらしい姉弟で

「やっぱり伏見くんって小さいときから綺麗な顔」

「ええ?紅子さ…なんでそんなに自分に自信ないかね…」

伏見くんは不思議そうに信号待ちで私を見た

「自信なんてない…気持ち悪いって言われてきたし
頭もよくないの。頑張らないと勉強も出来なかった…」

青に替わり発進したあと
伏見くんの左手が私の膝の上の手に触れた

「それは全部過去でしょ?オレは貴女のその瞳がすごく綺麗だと思うし、話してて紅子の頭のよさにいつもびっくりしてるよ…確かに天然だけどね?…ンハハ」

少し小さめな伏見くんの手はいつも優しく私に触れる

「伏見くん…」

「ねぇ紅子、今夜から『巧』って呼んでくれないかな?そんなんで貴女を縛れるわけじゃないけど…
オレ不安なんだ…貴女はとてもかわいらしいから…誰かに拐われちゃったらどうしよう、逃げられたらどうしようって…」

何だか大袈裟な事を伏見くんは話をした…

「私はふ…た、巧くんしか居ないもん…」

頑張って名前を呼ぶと…巧くんが目尻を思いっきり下げた

「やべー!可愛い!巧くん!!くー!」

(嬉しいのかな?)

確かに私も山多より、紅子って巧くんに呼ばれるのがいい

(ホントに好きになってくれてるのかな?)
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