ねぇ、顔を見せてよ
巧くんは家に着くなり
玄関先で後ろから抱き締めてきた

「紅子…」

「た、巧くん?」

紗由理さんから言われた

『伏見くんはあなたを大事にしてるのよ』

その台詞を信じたくて、確かめたくて…私は巧くんの腕を撫でた

「どうしたの?紅子…甘え…たい?」

身体を離した巧くんが私の靴を脱がせて揃えると自分の靴はポンポンと蹴り飛ばした

「ごめんな?嫌な思いさせて…」

「ううん、違うの…あの」

今しか聞けない…

意を決して巧くんの目を見た

「わ、わ、私を抱きたくないのかな…あの、抱くのイヤですか?」

「…え?」

困惑気味の巧くんに私は怯まないようにぎゅっと拳を握って続けた

「細いし胸もないし…色気もないけど…あ、あ、あの…私だって大人です!」

そこまで言うと少し怖い顔をした巧くんが私の左腕を引いて自分の胸の中にぶつけるようにして入れた

「ばっか…」

「ば、ばかですよ…どうせ…私に魅力がないから抱かないんでしょう?」

言っていて涙が出そうだった


「ホントにあなたはおバカさんだよ…あのね?
我慢してんのこっちは!!好きで好きで堪んないし、大事にしたいから我慢してんの!!」

それなのに巧くんがいつもより可愛らしい声で言ったから唖然としてしまう

「無理してんだよ!結構な色気を出してる可愛い寝顔見て何回1人でこっそり…あ、えっと…いや、ね?だから…そんなこと言うなら」

「ギャ…」

巧くんが噛みつくように口づけた

「今夜は遠慮しないよ?…紅子…」

色気たっぷりの艶やかな顔をして見下ろしてくる巧くんにクラクラする…

指が柔らかく私の太腿に触れる

「え?…あ……の…」

「どんだけ好きか、見せてあげるよ…」

「あ…」

そのままベッドに引き摺り込まれて

一晩中腕の中でなかされたのは……内緒です



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